「自動車の大転換期!」
自動車業界は100年に一度の変革期にあると言われます。
一つ理由のは動力源。もう一つは自動運転です。
地球環境に配慮するため、100年以上主役であり続けるエンジンに、ヨーロッパ勢はクリーンディーゼル、日本はハイブリッドで対応してきました。
そんななか、ディーゼルの排ガス問題や中国の急速なEV推しなどで、あたかも内燃機関(ガソリンやディーゼル車)はなくなると言わんばかりの報道が過熱しています。
「EVシフトのなぜ」
しかし、手のひらを返したようなEVシフトを紐解くと、いろんな側面があります。
世界販売トップのフォルクスワーゲンは、2025年に300万台のEVを販売すると発表。中国では一定の販売数をEVにすることが義務化され、同国で高いシェアを持つフォルクスワーゲンは世界販売の3割のEV化を進めます。これは新制度のNEV(New Energy Vehcle)に対応するためで、現在のEVシフト過熱報道の原因となっています。世界で圧倒的な販売台数を誇る中国は、自動車技術で世界の主導権を握るべく、官民一体となりEVを推進中。長らく研究開発を進め、欧米や日本が先を行く内燃機関から、”電気”に戦いの世界を変えようとしているのです。
「内燃機関の正義」
内燃機関の可能性追求に孤軍奮闘しているのがマツダ。内燃機関の熱効率を改善することで、1kmあたりのCo2排出量はまだまだ減らすことができ、その数値は電気自動車並みにできるといいます。ポイントは電気を発電するのに、Co2が排出されるということ。スカイアクティブディーゼルの高圧縮技術やロータリーでの点火技術を活かし、”スカイアクティブX”という、ディーゼル車のようなプラグレスのガソリンエンジンの実用化を進め、今ある技術とサプライヤーで環境問題に対応していくといいます。
「EVの現実路線」
日本はEV化で出遅れた・・と報じられています。しかしハイブリッドで電池とモーターを積んだ自動車のデータを世界一持っているのは日本です。”ボルボは2040年までに全車を電動化する”と報じられましたが、正しくは「全車に電動技術を搭載する」ということらしく、マイルドハイブリッド搭載車も含まれているのです。
しかしカリフォルニアのZEV規制(zeroエミッション・ビークル)にハイブリッド車は含まれません。PHVや燃料電池車・EVで、販売全体の16%を占めないといけないなか、トヨタ・マツダ・デンソーでEVの共同開発を行う新会社が設立されました。まずはトヨタお得意のハイブリッド技術を、高効率なスカイアクティブXエンジンと組み合わせることで、新しい技術に挑み、また日産に遅れる中国市場=EV化を本気で進めていきます。
また、EVの肝となる電池について、圧倒的性能をもつ固体電池の分野で日本の研究は進んでいます。世界レベルでの主導権争いが行われているのが「EVシフト」。実態は「中国シフト」といえるかもしれません。
新しい分野で新産業を育てたいという各国の思惑が、実体以上のEVシフトムードを生み出していそうです。少しずつEVが増えていくことに間違いはなさそうですが、その速度は過熱報道とは異なりそうです。そして、改めてモノづくり日本の底力が問われています。
クルマ好きとしては、今のうちに、エキサイティングな排気音が楽しめる「スポーツエンジン」に乗るのが、先を見据えた賢い選択と考えます。クルマ好きはこの先も一定数居るはずなので、高性能エンジン搭載車には希少性からプレミア価格が付き、数十年後にはいい思いが出来るかもしれません。
写真・文 イオ ケンタロウ