Cセグメント(全長4.3m前後、全幅1.8m前後、排気量1.6~2.0クラス)のスポーツタイプに、熱い性能競争が繰り広げられています。
今ほグローバル化が進んでいなかった2000年ごろまでは、シビックやレビン、インプレッサとランサーエボリューションなど、国産車同士で高性能を競う時代が長く続いていました。
21世紀に入り、スピードを競う時代は終わり、トヨタのGOAやエアバッグに代表される安全性や、プリウスに象徴される低燃費を競う時代に。世界的にもこの傾向は同じで、一部のスポーツカーを除いて、スピード=高性能ではなくなりました。
一方、安全で低燃費な車が良いならクルマに乗らないのが一番良いわけで、人々のクルマへの関心が薄まる中、「スピード」に価値を見出すヨーロッパを中心に、大衆車の走行性能は引き続いて磨かれています。
名実ともにその代表格はフォルクスワーゲンゴルフのGTI。”アウトバーンに民主化をもたらした”とされる初代GTIのデビューは今から40年以上前。のちにプジョー205GTIがデビューし、国産でもシビックやレビンなど、大衆車ベースの高性能車に大きな影響を与えています。その歴史あるゴルフの最新スポーツモデルが「GTIパフォーマンス」。
GTI Performance
ゴルフ7GTIをベースに、15psアップ(245ps)の2リッターターボエンジン、専用の大経ブレーキ、19インチのタイヤ/ホイールなどを採用。”パフォーマンス”デビュー前まで設定されていたGTIダイナミック(230psで18インチの限定車)の20万円アップでエンジン・ブレーキまで強化されたモデルです。ライバルは最近デビューしたルノーメガーヌRS&シビックタイプR。少し広げるとベンツAクラスAMGやアウディRS3、プジョー308GTIやアルファロメオジュリエッタヴェローチェなどになります。
ドイツのニュルブルクリンクサーキットで、FF最速を競っているのは、GTIとメガーヌ、シビックの3台。シャシー性能は乗り比べしないとわかりませんが、エンジン性能は320psとなるシビックに分があるようですが、もはやどれも速いことに間違いありませんし、それこそタイムを競う時代でもない気がします。
いずれにしても、大衆車(と言っても大きいし高いです)をベースに、性能を追及した高性能モデルがある欧州車は、自動車人気、あるいは商売の何たるかを心得ているように思います。
SUV全盛の昨今ですが、これら比較的コンパクトな低全高の高性能車は、多くの人に”自動車を持つ”あるいは”運転する”本質的な悦びを教えてくれるはず。映画カーズやアニメイニシャルDなどの影響で10代20代のスポーツカー人気は盛り返しています。もっと小さなBセグメント、または国産の86やロードスターあるいは中古車も含めて、運転する愉しさに直結する”走行性能を磨いたスポーツモデル”に多くの人が触れることが、自動車の本質を磨くとともに、自動車マーケットの底上げに直結するように思います。
文 イオ ケンタロウ