「ブランド」について

グローバル社会が進み、家電をはじめ日本企業と製品の存在感が下がっています。
”安くていいもの”を製造・販売することで支持を広げてきた日本製品は、製造の人件費が高くなるにつれてアジアなどに拠点を移して低価格を維持してきました。そのうち他国でも同様の製品が作られ、”安くていいもの”は日本だけのものではなくなることに。価格競争に巻き込まれなかったSONYも今では存在感がなく、LGやサムスンに押され気味です。

クルマの世界でも同様の現象が起き始めています。
かつて日本車は、大きく燃費も悪いアメリカ車に対して、信頼性が高く経済的なことが受け入れられアメリカを中心にファンを増やしていました。自動車先進国のヨーロッパではイマイチの状況でしたが、戦後の高度成長、経済大国日本を中心で支えたのは自動車だと思います。
一方、安くていいものを作ることに邁進するあまり、”いいものを適正価格”で売ることをしてきませんでした。未来永劫企業努力だけで安く作れると踏んだのでしょうか?自動車先進国のヨーロッパのクルマ作りは、いいものを作りあとで価格を決めていた時代があるそうです。そして自社のファン=ブランドイメージというものを時間をかけて構築してきています。

ブランドとは何でしょう。企業や製品に対して多くの人が抱くイメージではないでしょうか?メルセデスベンツといえば王道の高級車、BMWはスポーティーな高級車、ロレックスは高級腕時計などです。またコカ・コーラやマクドナルドもブランド。これら大衆向けブランドは「マスブランド」と言います。一方、メルセデスベンツやBMWはプレミアムブランドとして広く認知されています。

ブランド作りは歴史と一貫性が大切と言われます。メルセデスベンツは高速移動に耐える安全性を磨き、安定性と安心感で世界のVIPから支持されてきました。BMWは安全でありながら、クルマを運転する悦びを求めるユーザーに向けて車体をセッティングし続けています。ポルシェはラインナップを広げていますが、イメージリーダーの911シリーズは一貫してリアエンジン・リア駆動で長年共通するボディデザインで統一されています。

日本車のブランドづくりはどうでしょうか?1989年にアメリカで初代LS(日本名セルシオ)が誕生しています。このクルマは好景気を背景に、日本車の技術が世界の頂点にあると言われたころに、トヨタがプレミアムブランドに挑戦したものです。圧倒的に静かな走りと高品質な内外装で、瞬く間にアメリカで1番人気の高級車になりました。アメリカ人は歴史や世間体を重んじるお国柄ではなく、いいものはいいと受け入れてもらえたのです。同時期にはアキュラNSX(ホンダNSX)やインフィニティ(日産)も立ち上がっています。初代レクサスLSのインパクトは大きかったらしく、ドイツメーカーほか、ジャガーも車体をばらして徹底的に研究したと言われています。

一世を風靡したレクサスですが、その後は他メーカーも品質を上げてきたことと、その後の車種が普通だったことで徐々に存在感が薄れていきました。日本でもブランド導入後10年以上経っていますがメルセデスベンツやBMWの台数に届かない状態に甘んじています。これには様々な原因があると思いますが、ブランド戦略のブレが大きいと思います。徹底的に高品質ならいいのですが、トヨタ車ベースで見える部分を替えて高価格であったり、ハイブリッドなのかハイパワーなのか、高級セダンなのかクーペなのかレクサスを象徴する、誰しもがレクサスと言えばこれ!といえるものを持たずに来たことと、時を追うごとにますますイメージがブレていることが原因と考えます。

プレミアムブランドは数を追うとマスブランドになります。
プレミアムブランドとは、大衆がプレミアムと知っていることが大切です。
プレミアムは製品こそが作ります。
製品を超えるには歴史が必要です。
歴史には一貫性が必要です。

勝手にまとめましたが、プレミアムブランドとは、いいものを作り、イメージが定着するまで作り続け、発信し続け、直接の購入者でない人にも認知されてこそ本物と言えそうです。その領域に達すると、ブランドイメージを利用して価格帯を下げると、多くのシェアを取ることができるのだと思います。ベンツやBMWなどをはじめこの手法が増えています。翻りマスブランドから客を厳選してプレミアムになるというのは難しいといえそうです。
働き方改革、賃金改正などが言われる日本ですが、自動車に関しては家電の反省から学び、いいものを、適正な価格で売ることが大切です。

そのためには、ブランド作りや自社のポジショニングなどの再定義が大切。自分たちはプレミアムなのかマスなのか、または何を目指すのか。

欧州の自動車メーカーから学ぶことはこれからもたくさんあると思います。

写真・文 イオ ケンタロウ

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