少子高齢化がますます進むなか、自動車業界の盟主トヨタが今後の国内での販売戦略について、大幅な車種の整理をすると言っています。
1990年には250万台あった国内販売は、2016年には約160万台に。このような状況で現在の豊富なラインナップは維持できないと判断したものです。
また、2025年をめどに、全ラインナップの75%を全店扱いの併売にするとも発表しました。現在トヨタは、トヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店と4系統のチャネルを維持しています。それぞれに個性がありターゲットも違えています。
他社はと言うと、日産はサニーやプリンスなどから、レッドステージとブルーステージなり、結局はそれもなくなりました。ホンダはクリオ、ベルノ、プリモと分けていましたが、車種の併売が進みホンダカーズ1店に。マツダもバブル期に、マツダ店ほかアンフィニ、オートザム、ユーノスなど5チャンネル体制を敷いていましたが、今やマツダ店と一部アンフィニ店が残るのみとなりました。
潮流としては販売店を整理する方向ですが、トヨタはそれなりに維持できているし、この先も続いていくものと思っていたなか、車種を減らしながらどうしていくのでしょう?。
販売4系統は維持しつつ、地域性に合わせた販売体制を整えていくというのです。
具体的には、プリウスやアクアなどの都市型モデルと、地方では、クラウンやハイエース、軽自動車など郊外で売れるクルマの販売を充実させるということのようです。
確かにひとえにクルマ離れと言っても、交通手段が充実した都市部と、クルマがないと生活できない田舎ではその進行具合が違います。地方でも、特に田舎にいくと、今でもカー用品店や洗車場で、若いカップルやお兄さんを多数見かけます。一方都市部では、十分な所得を得ていても、クルマを買う気のさらさらない人たちがたくさんいます。
日本狭しと言えども、大都市と田舎では、その生活スタイルや人々の価値観が随分違います。であるなら、それぞれの地域の特性にあった車種を中心にラインナップし、ディーラーごとに販売手法を変えていく。トヨタの販売戦略は、「販売のトヨタ」「マーケティングのトヨタ」と言われてきただけのことはあり、とても理にかなっていると思われます。
業界のリーダー、ひいては経済界のリーダーのトヨタが、地域性に着目し、中央一括発信の流れを変えて成果を出せば、地方には地方の価値観が確立され、東京一極集中も緩和し、それこそ国が掲げる地方分権にもつながっていくのではないでしょうか?
こうしてみると、世の中はテクノロジーで変わると言いますが、やはり民間の力・消費者の意向が与える影響は大きいと感じます。だってコンビニエンスストアだって、東京と広島で違っていた方がワクワクしますから。
自動車ディーラーも、中心として扱う車種やサービスが地域密着型の方が、顧客満足の向上につながるという当たり前のことに、トヨタ自らが踏み込んでいくということ。ぜひカンパニー制で細やかな販売戦略を推進して、国内の自動車マーケットを元気にしてほしいと思います。
文 イオ ケンタロウ