フォード・モーターが日本市場からの撤退を発表して、1か月が過ぎました。
今後の方向性について、未だメーカーからディーラーへの正式なアナウンスは行われていないようです。
ですので、この件について、わかる範囲で私見を述べてみたいと思います。
まず今後のアフタ-サービスはどこがみるのかという問題
未だメーカーから販社への公式アナウンスはなく、はっきりしたことがわかりません。
メーカーとしては、これまでの販社に任せるという方向のみならず、新たな第三者が受託するという別の形も模索している模様。東京・大阪という巨大マーケットのディーラーは、メーカーが直営していました。これらの撤退は決定しているので、まずは大都市のフォードオーナーの今後が心配されます。
では、なぜこんな事態になったのか?
フォード車の販売は年間5000台に届かず、かつ日本マーケットに将来性がないと言っています。まさに「立つ鳥跡を濁す」といった感じ。一方メルセデスやBMWの日本代表は、日本はとても有望なマーケットと評して、販売を着実に伸ばしています。
この差は何でしょうか?
いわゆる自分たちの商品をそのまま買ってくれるマーケットは有望で、理解しないマーケットはけしからんといったことでしょう。日本人が欲しいクルマより、フォードにとって都合がいいクルマを優先させてきています。
商品・製品の良し悪しだけでなく、受入れてもらうための努力に、改善の余地があったように思います。USフォードのクルマ(マスタング/エクスプローラ)は左ハンドルです。このサイズで左ハンドルでは、おのずと乗れる人が限られます。
またEUフォード(ヨーロッパフォード)がわかりにくかったもの問題です。同じフォードとして展開していましたが、一時輸入をストップしたり、ガス食いのアメリカ車のイメージが強かったりと、販売戦略を間違えていたと思います。
せめてフォードマークをUSは青、EUは赤など変えるべきでした。
そして、ヨーロッパフォードのクルマは、モータースポーツでの活躍を活かし、STなどスポーツグレードを展開するべきだったと思います。確かにデータでみると、日本はAT比率が99%くらいで、スポーツモデルの生きる道はないように見えます。けど、ルノーやプジョーなどマニュアルモデルを輸入し続け、イメージ戦略はうまく行っていると思います。
ニッチで生きるメーカーは、売れるのは普通のモデルでも、スポーツモデルでイメージを高めることが大切です。
そもそも大衆車メーカーなのに、輸入車の常として高級プライスで売ったことに無理があったことも否めません。
何より、フォードはもっと日本で”知られる努力”をすべきでした。マーケットに歩み寄るべきでした。
クルマとしては、確かにいいものを作っています。エコブースト技術や通信技術、またモータスポーツでの活躍などから、高性能なこともうかがえます。
なのに一部の人を除いてそんなことは伝わっていないのです。
売れないから広告できないのか、広告しないから売れないのか。
お金をそれほどかけなくても、ルノーはクルマ好きが集まるイベントにまめに出たり、プジョーはファッション誌を活用したり、努力の跡があり、それが身を結んでいます。
実はフォード自身が、日本でどう振る舞うか、どう見せるかを、最後まで決められなかったのではないでしょうか?
1925年に日本に進出し、以来日本でマーケティングをしてきたフォード。
実は、TPPの合意内容が撤退の決定打になったという一面もあります。
販売ディーラーも長い歴史を持ったところが多くあります。ともに歩んできた正規ディーラーが望むなら、アフターは酸いも甘いもフォードを知り尽くしたプロに任せて、時が熟せばその人達の一部で、再度フォードを輸入できたらと思ったりもします。長年世話になったディーラーに、恩を仇で返すようなことは避けてほしいものです。
フォードは、クルマが好きな人、日本マーケットを理解できている人が、うまくマーケティングすれば、まだまだ可能性があったと思えてなりません。