中古の高級輸入車を安っぽく改造する「チープアップ」が流行っているそうです。あえて着崩してギラギラせずに乗る。古着感覚のオシャレが、クルマ離れ世代にも受けており、新しいファンを拡大しています。
簡単に言うとドレスダウンの世界。ルノーカングーはあえて黒バンパーに鉄のホイールがオシャレとされてきましたが、ベンツやアウディの中古車を商用車風のスタイルで仕上げるのがちょっとしたブームになっています。高級車でも現地のクルマのように、樹脂バンパーやモールのままにして、ホイールもあえて安っぽいものに。ルーフキャリアをつければハリアーなどの流行りのシティ派SUVよりも本格的なキャンプの相棒に早変わり。都会のファッション業界や美容師などの間で流行っているようです。
オークションなどの浸透により中古品に抵抗がない30~40代を中心に、2000年前後の高級輸入車を”安っぽくカスタム”するブーム。多くはクルマ離世代と括られる年代ですが、バブル世代とは違った価値観で、ロスジェネのカッコよさを追求しているようです。
また最近は20代でもクルマ人気が再燃しているようです。就職戦線の良さも後押しし、ジープやベンツなど大型SUVをフルローンで買う若者が、地方を中心に目立ってきています。これには映画「カーズ」などが影響していると言われています。2006年ごろに公開されたカーズを見た子たちは、早ければ20代になっています。幼少期に夢中になったものは大人になっても好きなことが多く、クルマ離れに歯止めをかけています。
またイニシャルD人気も別の層に影響を与えています。なかでも90年代のスポーツカーに乗るクルマ女子。若い女の子がRX-7やスカイラインなどをカスタマイズして乗っているようです。
輸入車のチープアップも90年代のスポーツカーも、いずれも中古車なので実は中心価格帯は100万円前後。クルマを手軽に思う存分楽しもうと思えば、今も昔も100万円くらいが現実的なのです。この現実を踏まえることなく86やロードスター、RAV4など若者に向けてリーズナブルな価格設定と 言われていますが、250~300万円は若者にとって本当にリーズナブルでしょうか?安全装備や燃費対策など、お金のかかることばかりが求められる現代の自動車。だから多くは軽自動車を買い、それでは満足できないオシャレな若者はなく古いクルマをカスタムして乗るという構図に変わりはありません。
何はともあれクルマに全く興味がない人が増えていた中、クルマを買いそしてカスタムして自己表現する若者が一定数いるということが、自動車業界にとって明るいニュースです。
今のブームは、まずは中古車から入り、”悪路に強そうでタフに見えるクルマ”にカスタムすること。このキーワードを踏まえて、カスタムパーツや新型車を企画・開発したメーカーこそが一部とは言えせっかくのクルマブームを育ててくれると思います
写真・文 イオ ケンタロウ